東京から1時間で訪れることができる埼玉県西部に位置する秩父は、山々や渓谷など豊かな自然に囲まれている。
一方でその地理条件や気候の影響から稲作が制約されたため、江戸時代からは温暖さと豊かな水源を生かした養蚕業や絹織物の生産が盛んになった。規格外の繭から日常着としての織られた秩父太織や国の伝統工芸品にも指定される秩父銘仙などの絹織物が生まれ、今も織り続けられている。
また五穀豊穣や天下泰平の祈願などから生まれた、日本三大曳山祭の秩父夜祭をはじめとした300近くの祭りや、「秩父三十四箇所」と呼ばれる34か所の巡礼地などが今も残り、民俗工芸と信仰文化といった目に見える物と目に見えない物語が地域に根づいている。
工芸と信仰。双方の体験を通じて、秩父に脈々と受け継がれている技術と精神を体感していただきます。
信仰と工芸。神社の宮司との対話や祭の見学からこの土地の精神性を感じ取り、また唯一残る養蚕農家・影森養蚕社をはじめとした養蚕と絹織物体験を通して、この土地特有の風土と伝統的な技術を体感していただきます。
稲作に向かない風土により、秩父では養蚕で年貢を納めていた。かつては住民の9割が養蚕業に関する仕事をしていたとも言われる地域も、現在は影森養蚕社一軒となった。蚕を育て、繭を取る工程を通じて、秩父の歴史と文化を感じながら、工芸の素材づくりを体験できる。
崇神天皇の御代(紀元前97年〜28年)に知々夫彦命が住民に養蚕と機織の技術を伝えたことが起源と言われる新啓織物。今なお生産されている秩父銘仙の作り手を訪ね、絹を素材とした織物の体験を行いながらその美しさを支える技術と精神を体感できる。
秩父地域の信仰を支え、例大祭「秩父夜祭」も行われる秩父神社をはじめ、札所巡りとして観光資源にもなっている「秩父三十四箇所」を訪れ、秩父の信仰の歴史と暮らしや工芸とも結びつきについてお話を伺う。