500年の歴史をほこる吉野林業。その担い手である山守は、木を育てる技術と精神性を親から子へと受け継ぎながら、何代にも渡り1本の杉や檜を育て上げます。先祖が大切に手入れをした木を伐り倒す前、山の神に感謝の気持ちを込めて手を合わせる山守の姿は、木材の美しさにも表れています。
美しく育てられた1本1本の木は、山守の手で丁寧に伐り倒され、釘や金物を使わずに家を建てる伝統構法の大工や、1本の木から人々の暮らしを豊かに彩る美しい器を生み出す木工職人の手で、人々の暮らしに届けられます。
吉野は山とともに生きる工芸の匠達の山。そんな山に足を運び、匠達と生活者をつなぐ伝統構法の建築士の案内のもと、山守、大工、木工職人と出会い、対話しながら、人々とともに500年を旅する木の物語をお楽しみいただきます。
世界最古の木造建造物 法隆寺と同じ日本独自の伝統構法で、木材にこだわり、300年を超える長寿命住宅を設計する建築士 木造建築東風 の佐藤氏、岡本氏の案内のもと、吉野の山とともに生きる山守、大工、木工職人の匠達の現場を巡ります。
400年かけて1本1本の杉・檜を育てる山守。先祖が大切に手を入れ続けた木を、感謝を込めて手を合わせ、伐採する。これまで山守は木材を伐採し、市場に木を流通させるところまでを担うため、自分達が育てた木が誰にどのように用いられるかは知りようがなかったが、山と生活者をつなぎたいと考える木造建築東風チームとともに、伐採現場の見学ツアーを開始している。
伝統的構法を受け継ぎながら吉野で活動する大工。常に技を磨き、道具の手入れ、下地の準備にこだわる。大工歴50年の匠。自然を愛し、1本1本の木の特徴や長所を活かした家づくりに取り組む。
元パイロットから木工職人へ。一般的に木の器を作る際には檜などの硬い材を用いるが、2010年に初めて吉野杉で器作りに挑戦して以降、その面白さに夢中に。高速で回転する木材に刃物を当て、自在に木製の器を削りだす。1996年から木の器を作り続ける木工マエストロ。
家を建てるための木材は市場から購入せず、山に赴き、信頼する山守から購入する。「世界に、300年先も美しい風景を」残すことをスローガンに掲げ、素材、技法、意匠にこだわり、美しくしなやかな家を建てる伝統構法の木造建築家。先人たちの積み重ねで育つ木の成り立ちを生活者にも知ってもらうため、山と生活者をつなぐツアーをスタートした。